連夜、息をひそめ鏡面で赤い双眸が揺らいだ。どんな暗がりでもこの瞳だけは失われない。8つの時に一つ、この眼を潰した。鏡面に指を這わせ抉る。爪がわずかに削れるような気がした。暗い顔の中に傷を負って歩いているように以前存在した弟の姿が動いた。それは12の時に潰した光。どんなに鏡が光を反射したとて返せぬわずか落ちていく光は0.002%。これが真神糺人を傷つける。これが真神糺人を殺す。あの弟の名はスウであった。どう書くのかさえ知らない。10歳だったのに、2歳しか違わない自分の半分ほどしか背丈はなかった。スウは母の生き写しであった。だからなのか知らないが母はスウに構ってばかりだった。他の兄弟が母と並んでもちっとも家族には見えなかったがスウと並ぶと二人は魂の爪先...03Feb2018GKSN真神糺人
フューネラルマーチさいしょに死んだのはおばあちゃま。毛皮のコートにアンティークなカメオ。たくさん素敵なものを残して死んじゃった。なみだくんは大喜び。一人で全部持ってった。つぎに死んだのはおじいちゃま。ボルネオから来たステッキにライカ。たくさんいかしたものを残して死んじゃった。なみだくんはまた大喜び。一人で全部持ってった。「次は誰が死んじゃうのかな。」なみだくんがうきうき壁の上。下から隣のお家のちいちゃんが怒った。「いやな子!」なみだくんはそんなこと言われたって、じっとちいちゃんのスカーフに見とれてる。それから、はじめに殺したのはお隣のちいちゃん。ちいちゃんのお姉ちゃんがあげたシルクのスカーフはなみだくんが持ってった。一人で全部できるんだ。一人で全部持...03Feb2018GKSN渕藤ナミダ
Goodmorning,Monster孤児院にて「エム、オー、エヌ、エス、・・・モンスター?」「違うわ、それはねモンステラって読むのよ。」「”モンステラ”」まだ7歳だった僕は英語が読めなかったね。施設の英語教育係のミスファビーはふくよかな体とイギリスの口を持っていた素敵な人だった。よく午後は退屈そうに遊びまわる子ども達の中でミスファビーと英語を勉強していたが「あの子ども達は皆、メリーゴーランドだったのかもしれない。」と言って終始、談笑もしていた。施設には子ども分の長机と椅子、テラスや日差しもあったしモンステラと僕は居心地よく根を張っていた。あの時、ミスファビーに小説や詩歌の面白さを説かれていなかったら僕はもしかしたら社会や物理の教師になっていたかもしれない。今となっては...03Feb2018GKSN葬殮児然児
この藍で全て黒軍抜けてすぐ海に行こうという話になったのはどちらからか覚えていない。「海ってさ、実は初めてだよね。」お前は慣れない三つ編みをして可愛らしいワンピースを着ていた。海岸線での散歩の最中にお前は言った。オレは興味が無さそうな声で相づちを打ってしまった。おまえは水平線を眺めていた。オレの居ない方向へ、ただ遠く。あの辺に神様がいるのかなあと呟いたのが聞こえた。オレはいないな、とだけ返すと、そうだよね。とよくわからない笑みだけ返された。お前は靴が煩わしくなったので裸足になると、オレも真似して裸足になった。砂が痛いだの楽しそうに笑いながら言っているお前がいつもよりも子供っぽくみえた。「高校生になったら部隊とか決まるんだよね。」「・・欠番が出たら...03Feb2018GKSNふたご